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時津賢児コラム from france
内弟子第二号、ダニエル君 2008.1
 
新年おめでとうございます。皆様の健康と幸せをお祈りします。
これから毎月私の近況を簡単にお伝えしたいと思います。自成道の仲間の状況を知ることによって、張り合いも出てくるのではないでしょうか?自成道の活動を日本の中だけで考えず、むしろ海外の人々の動きや発想との関連の中で捉えるとよいのではないでしょうか?

書くことは沢山ありますが、最も身近なことから始めたいと思います。
昨年2007年の10月末日から、内弟子が入りました。
私事ですが、この一、二年前から私の母の具合が余り思わしくないので、内弟子の申し込みはすべてお断りしてきました。今回なぜ内弟子を許可したかと言うと理由があります。

昨年の五月にフランスとスイスの国境に近い町で週末のセミナーをやりました。稽古が終わって道場に近いレストランで昼食をとったあと、例によってコーヒーを飲みながら武道談義にふけっている時、テーブルの隅っこで目を輝かせて話しに聞き入っている若者がいました。次の稽古の後で声をかけると、喜んで話しに乗ってきました。
そこで分かったことは、彼は23歳のドイツ人で名はダニエル。職業は大工。数ヶ月前に見習い期間を終えて正式な資格を得て現在は大工を本業としている。自成道は3ヶ月前から始めた。
翌日のセミナーが終わって解散する前、もじもじしながら話しかけてきました。
話の大要は次の通り。
「自成道を真剣にやっていきたいのです。内弟子のシステムがあると聞きましたが、どんな条件があるのでしょうか?。」
「家の事情があって、いま現在は内弟子は採っていない。」
私がそのように返事をすると、誰かから既に入れ知恵をされたらしく、
「私の本業は大工です。お宅の家の大工仕事をするという条件で内弟子にとっていただくことはできませんか?」
私が住む家は昔の農場を改造したもので、住み心地は大変よいのですが、建ってから既に百年以上たっています。石造りの建築では数百年というのは珍しくありませんが、大変だだっ広い家なので、痛んでいるところがあちこちあるし、納屋と道場がこれに付随しています。全部計算にいれると800平方メートル近くになり、手を入れる所はいくらでもあります。
つまり、大工さんの仕事には事欠かないということです。

そういう成り行きでダニエル君は押領司君に続く内弟子第二号として、昨年の10月末日より我が家の一員としてやっています。
当初は三月上旬までと言うことでしたが、一月たった頃,言ってきました。
「来年いっぱいまで、いや最低の独り立ちができるまで置いてください。」
そして間をおいて、
「自成道はやればやるほど深くなるということが分かりました。それに、住み心地が大変いいし、おいしい物を沢山食べさせていただけるので。」
彼は身長180センチ、体重83キロ。こちらでは中くらいの体格ですが、なにしろよく食べます。
そういえば、押領司君もよく食べていました。
押領司君が日本に帰ったあと、食事の買出しが半分に減ったと家内が言っていましたが、現在はまた押領司君がいた頃と同じ状況になりました。

彼の希望は、近い将来ドイツに帰って大工として生活を立てながら道場を作りたい。道場をやっていくための最低の力が付くまで内弟子としてやっていきたい。

この年末に10日ばかり里帰りしてきました。
彼の故郷はフランスの国境の近いカールス・ルエという人口28.5万人の町です。興味のある人は世界地図で見てください。
自分の故郷でいい場所を見つけて将来は自分の道場を作りたい。大工仕事は自分でできるし、従兄弟が沢山いて、水道工事や電気工事の職についているのもいるので、みんなを動員して道場を作るというような話もちょっとしてきたようです。
「私のところは家族は連結が固いのです。」と誇らしげに話します。
「日曜日になると必ず祖母の家に30人くらい集まって昼食会をするのが習慣になっています。その場合、料理するのはたいてい男性です。夏のバカンスの時は、よく貸切バスで50人くらいがまとまってスペインとか色々な所でキャンプして過ごしました。」
何かといえば家族が集まって来るそうです。

私の方としては、家の痛んだ所が修理されて住みよくなるし、家の留守番もしてもらえるので母を置いて外出する時も安心です。しかも気立てがよく、家内も母もお気に入りで、稽古も熱心です。
そういう訳で、ダニエル君は無期限の内弟子として今のところ毎日元気にやっています。そのうち日本にも連れていきたいと考えています。彼は来月で24歳になります。ちょうど私がフランスに亘った年齢で内弟子になった勘定です。

文末になりますが、3月28日から30日までの東京セミナーには、フランス人のステファン・ミィリヨンという弟子を連れて参りますので、皆さんよろしくお願いします。
彼は40歳。彼の誕生日祝いにと、奥さんが日本行きの往復切符をプレゼントしてくれました。私の道場に弟子入りして一年ちょっとです。皆さんご存知かどうか知りませんが、「エアーバス」というフランスの航空機製造会社に勤めています。空手暦20年で、試合はよくやってきたようです。型は嫌いだけど組み手は好きと、はっきりしています。自成道の実践については、まだ大変硬い動きでもごもごしていますが、とても気立てのいい青年ですので、今回連れて行くことにしました。
押領司君の部屋に住まわせていただけるそうで、彼は恐縮しつつも大変喜んでいます。セミナー終了後、約一週間東京に滞在します。押領司君のレッスンに出てきますので、日本語はできませんが、皆さん英語で声をかけてあげていただければ喜ぶと思います。よろしくお願いします。

では、また。
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